保険会社の再保険ポートフォリオを最適化する

概要

近年増大している自然災害リスクに対応するため、保険会社が保有する膨大なデータを活用した再保険ポートフォリオ策定をアニーリングマシンで行いました。

解決したいこと

私たち一般消費者は生活の中で、生命・健康・財産等に様々な種類の保険をかけています。それらの保険は、補償対象や補償内容、補償額が異なり、また財産の設置場所も様々です。

保険は相互扶助で成り立っており、保険加入時に保険料として払い込んだお金は助けが必要な人に保険金として使われ、自分が助けられる時には他の人が払い込んだお金から保険金として支払われます。保険会社はこのような保険の仕組みを維持する役割を担っています。

自然災害をはじめ、一度発生すると巨額の保険金支払いが発生するような保険の場合、すべてのリスクを保険会社1社で引き受けることは困難です。そのため、顧客から引き受けたリスクの一部を他の保険会社に引き受けてもらう再保険の仕組みがあります。再保険の仕組みがあることによって、補償対象・補償額などを維持しながら、保険会社同士でバランス良くリスクを分散することができます。このような互いの財務基盤を支え合うネットワークを活用することで、社会を支えているのです。

例えば、東日本大震災では家計向け地震保険が1兆2000億円以上などの巨額に上りその6割強が再保険から支払われたといわれています。

再保険は、災害の甚大化・頻発化している昨今、経済の高度化により補償額も非常に膨らんでいることから、欠かせない仕組みとなっています。

再保険におけるリスク分散の目的は保険引受余力の拡大です。つまり、保険会社の財務力などにより保険会社単体では引受けが難しい大きなリスクであっても再保険の活用により引受けが可能になります。再保険を活用し、最適なリスク分散を図ることによって保険会社は顧客ニーズに応じた補償を提供することが可能になります。

再保険を最大限活用するためには、様々な考慮事項からポートフォリオを策定する必要があります。しかし、対象の属性や再保険市場の引受ニーズなど、考慮すべき項目は膨大な数に登り、全ての項目を考慮しながら最適化計算を解こうとすると、従来の計算技術では追いつくことができません。

そのため実際には、現実的な時間で処理を完了させるために、エリアを分割して最適化処理を行っていますが、それでも多くの時間がかかります。

また、考慮すべき項目が状況によって変化した場合(災害リスクの変化等)、再度最適化計算が必要になりますが、都度同じ時間がかかるため、技術革新による効率化が求められている状態です。

現状の問題点

  • 考慮できる保険の数が少なくなってしまう
  • エリア毎に分割し計算するため、全体の関係性を考慮しきれない
  • 分割の仕方によって結果が異なる
  • 分割しても再計算に時間がかかりすぎる

解決に向けて

保険会社の持つデータ(災害の発生確率や被害範囲など)を活用して、顧客ニーズに応じた補償を提供しつつ、保険会社が引き受けるリスクを最小化する再保険ポートフォリオを策定する。具体的には、保険種類や対象の項目ごとに自社/分散の比率の組合せを最適化します。

最適化の計算に必要な情報

  • 保険料収入
    与えられた条件(補償対象、地域など)に応じて、期待される保険収入
  • 災害リスク
    予測される災害の種類、規模、地域、範囲、発生確率、発生時期および間隔

最適化の対象

顧客ニーズに応じた補償を提供しつつ、保険会社が引き受けるリスクを最小化する

考慮すべき相互作用

  • 補償額の自社/分散比率
    自社で補償する補償額、各社で分散して補償する補償額のトータルが一定を超えないように考慮する
  • 災害リスク
    対象機関でのリスクが、特定の地域や災害に偏らないように考慮する

導入後の変化

最適化計算自体に数年かかってしまうため実施できていなかった、数万銘柄にも及ぶ保険契約全体のポートフォリオ策定が数日で実施可能になりました。

計算時間の劇的な削減により、状況に応じた再計算も容易になったため、新しいリスクに対して素早い対応が可能になりました。

また大きな規模の問題も取り扱えるようになったため、保険会社が保有する膨大なデータを活用し、より大規模なリスクや中長期に備えたポートフォリオの最適化も実現することができました。

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